白鳥をたずねて            佐藤 幹郎

我が家から車で約30分のところにあるウトナイ湖に白鳥に会いに行ってきた。

ウトナイ湖は千歳空港、苫小牧港それに巨大な苫東工業団地に囲まれていて、札幌〜苫小牧を結ぶ
幹線道路のすぐそばに位置し、とてもこんなところに野鳥の楽園があるとは思えない場所にある。
幸か不幸か、バブルの崩壊により、苫東工業団地への企業立地がほとんどないままに終わったのだが
野鳥たちには幸いしていることは間違いない。

ウトナイはアイヌ語で肋骨という意味で、肋骨のような形で周辺の小さな川が流れ込む所から来ているという。
周囲15kmほどの小さな湖だが、平均水深が60cmしかないので、湖全体が大きな湿地といってよい。
湖岸は原生林で囲まれ、ひとが入れるのはほんの一部だ。

湖岸には、約2km隔てて日本野鳥の会の施設「サンクチャリ・ネイチャーセンター」と環境庁の「野生
鳥獣保護センター」が建っていて、この間の湖岸に遊歩道が造られている。

オオハクチョウは10月にはシベリアから飛来しはじめ、雪の降り始める11月下旬には一部はさらに暖かい本州に向けて南下する。

11月某日、センターに「白鳥たちとの面会日」が何時が良いかと訊ねると、先週から今週にかけて、飛来数が最も多いという。写真を撮るなら、午前中は逆光で湖面が光るから午後からの方がよいと親切に教えてくれた。

大型トラックががんがん走っている国道36号線からウトナイ湖へ折れると、突然静かな雑木林の中に入り、舗装もされていない道が続く。
林の中の空き地(一応駐車場ということになっている)に車を乗り捨て、「キツツキの小径」という遊歩道を通ってネイチャー・センターへと向かう。

キツツキの小径
キツツキの小径を抜け、山荘風のネイチャーセンターの脇を進むと、目の前に湖面の全景が拡がり、
白鳥の姿が見えてきた。
しかし、岸から遠くにいるので、ここから約15分、もっと間近で観察できるという「白鳥の小径」へと進む。
途中で、岸近くの入江のような場所で群れを見つけるが、長い首を折り畳んでみんな眠っているようだ。
さらに進むと、白鳥たちの数がだんだん増えてくる。
遊歩道を歩く人間を見つけると人懐っこく追いかけてくる。餌を貰うためだろう。

     風を避けて入江で眠る白鳥               餌を求めて寄ってくる(灰色のはまだ若い鳥?)

さらに白鳥の小径の終点にさしかかると、いましたいました白鳥と鴨(マガモ)の大群だ。
餌を与える場所になっているせいか、常にたくさんの鳥たちが集まってきている。
ここは環境省が近年完成させた「野生鳥獣保護センター」の前庭にもなっている。


ひと休みも兼ねて、野生鳥獣保護センターを見学する。
さすが国がつくっただけあって立派な施設だ。
湖岸に向かって、ずらりと野鳥観察用の望遠鏡が並ぶ。これで、ひとが入れない湖の対岸の観察も可能だ。
野鳥の本だけを集めた図書室や、自由に使えるパソコンが数台、飲み物を飲みながらゆっくり休憩できるコーナーやデスカッションルームなどもある。

メモランダム・コーナー
来訪者のメモを吊しているコーナーが興味深い。
見学に来た小学生などのメモに混じって、若い人のものもある。
人生の悩みなど、ここにひとときの癒しを求めて来る人が結構いるようだ。

最後に失敗談を一つ。
鳥の写真を撮るのに、遊歩道をはずれて湖岸に踏み出したら、とたんに両足がすねのあたりまでズブリと泥の中に。
カメラを草原に放り投げて、何とか脱出。ここは湿原であることを忘れていました。


早くも暮れかけてきたウトナイ湖を後に家路につく。