原さんのチェロ・コンサート   佐藤 幹郎 
原さんのチェロの腕前については、以前からよく噂には聞いていた。
どの程度の腕前なのか、喧伝されている割には、ほとんど誰も知らない(聴いたことがない)ようだ。
その原さんのコンサートがあるという。  原さんの演奏が遂にその秘密のベールを脱ぐ時が来たのだ。

しかも、情報提供者からもたらされたコンサートの内容も、場所と日時だけ。
コンサートの名称、曲目、チケットは要るのか等の情報も不詳。 ますます、謎めいて興味を刺激する。

地下鉄青山一丁目の駅から、赤坂御用地の境界に植えられた木々の見事な紅葉を左手に見ながら、
カナダ大使館の先を右折すると、閑静な高級マンションが建ち並ぶ一角に、会場となるドイツ文化会館はあった。

エックレス:チェロソナタ ト短調を熱演する原さん
原さんはプログラムの中にこう書いていた:
「pp(ピアニシモ)は私の苦手である。ポジションが不正確な上に、体の力が抜けないからである。
肩に力を入れないという事は私の永遠の課題である。今回はどうであろうか。」
なんとなんと、弱音部は繊細さが出ていて、とくに素晴らしかった。

ほかの人はアマチュアだからしょうがないけど、正しく間違わずに弾くことに精一杯だ。
原さんのチェロはちゃんと「歌って」音楽を聴かせてくれている。

先生のコメントも「原節(ぶし)が出て素晴らしかった。とにかく原節だ、、、、、」

原さんのチェロは、昔流に言う「旦那芸」程度かと思っていた今までの予想を完全に裏切るものでした。
(脱帽!失礼しました)
来年は、是非ともポケット型のデジタルレコーダを持ち込んで録音し、三八会ミュージックボックスで会員全員に聴いてもらえるように計画します。

フィナーレの全員合奏の後、原さんに挨拶し、会場を後にする。
別れ際、原さんニヤリと笑いながら曰く、、、、
「これからの打ち上げの飲み会が一番の楽しみなんだ」


             一緒に聴いた人(進藤さん、野中さん)
                                                                                    以上



























コンサートのプログラム→
先頃来日したベルリンフィル・メンバとの交流を記念したデザイン
だいぶ早く着いたので、ホールではフィナーレに出演者全員で演奏する曲のリハーサルをやっていた。
やがて小生に気が付いた原さんが、「やぁ、やぁ」とやって来た。

むかし、会社や寮で顔を合わせると「オッス」という感じだった原さんとチェロとが、どうしても結び付かなかったが、ここで初めてその経緯(いきさつ)を聞くことができた。

齢四十になったときに、仕事以外に何かをやろうと決意し、チェロの先生の門を叩いたという。
今日のコンサートは、共通の先生をもつアマチュアのチェロ愛好家の集まり「東京ゴーシュの会」の年一回の発表会だという。

プログラムを見ると、最後の全員合奏までに18人の独奏+一組のダブルコンチェルトで都合19曲を演奏、原さんは17番目に登場することになっている。
「すごいね、落語で言う真打ちじゃないか」と冷やかすと、
「いや、いや、古いだけで生徒会長みたいなものだよ。会社にいたときは、せいぜい週一回、30分位習うのが精一杯だったから、長い割にはそんなに上手く弾けるわけではない」
と謙遜しきり。しかし、これが単なる謙遜だったことが後で分かる。

コンサートが始まった。 出演者はまさに「老若男女を問わず」バラエティに富む。
一つ一つの演奏後に、先生のコメントが加えられる。 実際のレッスンでは、どうなのか分からないが、どこか良かった点を見つけて褒めてやっている。優しい先生だ。

プログラムがユニークだ。演奏者が、自分の演奏する曲目の下に、解説やら、曲に対する思い入れ、はては近況報告みたいのまで書いてあり、これを読みながら、演奏を聴き、先生のコメントを聞くと部外者でも結構楽しめる。

さて、いよいよ原さん登場。
今まで一度も聴いたことがないせいもあるが、どうなるのだろう、と我ながら余計な心配をしてしまう。
最初の音が出、数小節で、その心配は吹き飛ぶ。

                         
             演奏の音声はこちらから(先生の講評入)
ドイツ文化会館