 
作品展と岐部さん 石塚 洋
岐部さんの訃報を耳にしたのは昨年の夏頃でした。びっくりしました。
あんなに元気な岐部さんが早々に旅立ってしまうなんて考えられませんでした。
ご冥福をお祈りします。
岐部さんとの想い出は何と言っても平成15年から始まった『三八会作品展』ですね。
彼女は第1回目から積極的に手作りの「岐部さんらしい作品」を出展してくれた。
その上、開催日には、連日朝一番に会場に姿を現してくれ、テーブルの掃除、
ごみ袋の設置、飲み物やお菓子の用意など我々三八会のオジさん達ではとても出来ない事を 小まめにやってくれました。之には頭が下がりました。
岐部さんの裏方の配慮が無かったら、三八会作品展は10回も継続出来なかったろう。
今でも感謝の念で一杯だ、岐部さん、ありがとう!
それに岐部さんは筆まめな方でした。年賀状、お礼状を都度頂いた。達筆でその字は本当に生きているようでした。
「第10回作品展」(H24年9月)の奉加帳に岐部さんのサインを見つけました。
そのサインを末永く留めておきたく写真を撮りました。
岐部さん!また天国で『作品展』やりましょう。
安らかにお休みください。
岐部さんの思い出 佐藤 幹郎
1)ニットの貴公子 広瀬光治
2008年に北海道旅行をしたときだ。旅行の三日目帯広駅前のホテルから中札内村の花畑牧場へ
向かうバスの中で、岐部さんが私の席へやってきて、
「これから行く花畑牧場の近くのペンションの中にニット作家広瀬光治の作品の常設展があるので
そこへ行きたい。皆さんが昼食後の集合時間までに、集合場所まで戻るから、、」
岐部さんの趣味が編み物で、この年の作品展にも作品を出品していたし、彼女の願いを叶えるべきか否か
一瞬迷った。
しかし、こんな北海道の田舎のど真ん中で、もし迷子にでもなったらどうしよう。
それでなくても、もうすぐ70才に手の届く老人グループの旅行である。現地幹事の責任を考え、直ぐに
「岐部さん、駄目です。団体行動を守ってください」
とすげもなく彼女の願いを拒絶してしまった。
あとで、調べると広瀬光治はニット愛好者のなかでは「ニットの貴公子」と呼ばれる存在で、彼が気に入ったこの中札内村に別荘を構え、ここには首都圏でも見られない規模の作品群を常設・展示しているとのことだった。
ニット愛好家である岐部さんの滅多にないチャンスを、私の無知のために潰してしまったのだ。
その後、毎年出品される彼女の作品を見る度に、彼女に謝ろうと思っているうちに、作品展もなくなり、
そして彼女もいなくなってしまった。
2)ジョン・ゴールズワージー
岐部さんが朗読を始めたという評判が伝わってきた。深作さんが実際に朗読会を聴きにいって素晴らしかったという報告も入った。
そして、2013年度の三八会新年会のイベントの一つとして彼女に朗読を依頼することになった。
言い出しっぺの小生が「何を読んでもらうか」彼女と相談して決めることになった。
ちょうどその頃、物置の中の昔の蔵書を整理していたとき、古い段ボールの中から大学の教養課程時代の英語の教科書が出てきた。
「ゴールズワージー短編集」だった。英語の講義で読んだ本だ。
辞書を引いた訳語が書き込まれたり、下線が引かれた汚いページを繰っていると、その頃の若い日々が思い出され懐かしかった。
ジョン・ゴールズワージーは古い英国のノーベル賞作家だ。若き日の川端康成は彼の作品に触発されて名作「伊豆の踊り子」を書いたといわれる。
私はこの中の「Defeat(敗戦)」と「Dance for Us(我らがために踊れ)」というのが特に好きだった。
二つとも第一次世界大戦を題材にした作品だった。
「敗戦」はちょっと長すぎて20分の朗読では読めそうもないので、「我らがために踊れ」をお願いすることに決めた。
次は翻訳本を探さなくてはならない。増谷外世嗣と滝口直太朗の二つの翻訳があることがわかったが、ともに昭和30年頃の本で、近所の図書館にはありそうもない。
ネット上で古本を探したが、なかなか見つからない。そうこうしているうちに、だんだん朗読の日が
迫ってくる。
岐部さんの準備や練習(?)のことも考えると焦りを感じ、これから自分で翻訳しようかとも考えたが、最初のページで簡単に諦めた。
そうこうしているうちに、予約していた東京の古本屋から「見つかったので、買いますか?」という
メールが届いて一安心。直ぐに注文、四日後には手許に届いた。
北海道の片田舎に住んでいても便利な時代になったものである。
届いたのは、増谷外世嗣訳の何と昭和31年発行の新潮文庫。表紙は日焼けで黄ばみ、紙や印刷の質の悪さも手伝って本文も読むのがやっとの状態だ。
スキャナで取り込み、ファイルで岐部さんに送る算段をしていたが、出来上がったファイルを見ると
朗読の原稿には耐えられそうもない。
もう時間がない。岐部さんは彼女の性格からか露骨には催促してはこないが、かなり焦っているのではないか?
手間はかかるが、しょうがない。1日がかりで、本からテキストを書き写し、20ページのWordファイルにして岐部さんに送った。
岐部さんから、「素晴らしい作品で感激した。出来れば他の作品も読んでみたい」とメールが来た。
準備の時間が短かったのに、当日の朗読は素晴らしかった。

朗読する岐部さん
そして、この古い古い文庫本を彼女にプレゼントした。
あの本はいま何処にあるのだろうか、などと彼女を思い出している。
*岐部さんが朗読した「我らがために踊れ」のテキスト
*朗読の様子(動画)
思い出のアルバム

三八会例会(2005年1月)

松田町 西平畑公園(2005年2月)

川崎邸「群青の間」にて(2005年6月)

第四回作品展で出品作を説明する(2006年7月)

福井県東尋坊にて(2007年6月)

北海道白糠で太平洋を背に(2008年8月)

帯広競馬場でばんえい競馬の馬券を検討(2008年8月)

三八会忘年会 東芝芝翆莊(2008年11月)

三八会例会 東芝第八寮(2009年2月)
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