PC老人の震災日記(4)
                               
                              
9月9日 9:00

車をテレビ鑑賞や発電機代わりに使い、昨日は町中を多少は走り回った。
燃料計が1/2を割ったので、そろそろ給油したい。町のガソリンスタンドはもう営業を始めただろうか?
昨夜テレビで、北海道のガソリンスタンドの営業状況を経済産業省のホームページから閲覧できるという情報を得た。
早速、「北海道内の営業中SS(ガソリンスタンド)一覧」というpdfファイルをダウンロードして、眺めてみたが我が町のガソリンスタンドは1つも載っていない。
これは困ったなと思ったが、家内からついでにスーパーを覗いて豚肉、卵、ほうれん草、トマトがあったら買ってきて欲しいと言われたので出かけることにした。

会員になっているスタンドに行ってみると、親父が出てきて「開店休業」だという。緊急車両用スタンドに指定しておきながら、それが解除されると仕入れは大手元売り系が優先で、いまだにタンクが空だと言う。
我が町は人口は少ないけれど、室蘭から襟裳に向かう動脈である浦河国道沿いにあるので、ガソリンスタンドが4店もある。
すぐ近くの北海道一円のガソリン安売りチェーンの傍を通ると、「満タンOK」の大きな張り紙が躍っている。
ただ、ここのガソリンは安いが燃費が悪く「混ぜ物」が入っているとの噂があり、こんな時はまずいだろうとパスし、少し先のエネオスで給油した。
家内に頼まれた買い物をするのに、農協のスーパーに寄る。
卵や豚肉の入荷はなかったが、地元の朝採れコーナーでトマト4ヶとほうれん草2束を買うことが出来た。合計1,288円はどう考えても地震価格だ。

ライフライン情報
(1)経産省のガソリンスタンド情報
家に帰ると何故か急に怒りがこみ上げてきた。あの経済産業省の営業中SSの一覧表のデータは何なんだ。
我が町で営業しているスタンドは1店舗たりとも載っていないのは何故なのか?

この表が載っているページを注意深く読むと、ちゃんと官僚らしい逃げ道が用意してある。
曰く、営業が確認できているガソリンスタンドのうち、公表の了解を得られた事業所のみをリストアップしているという。営業が確認できているスタンド数が示されているので、このリストに載っているスタンドの数から公表の了解が得られたスタンドの数を逆算してみると、わずか37%である。
ということは63%ものスタンドが営業していることを公表しないでくれと言っていることになる。
本当にそうなのだろうか?何故営業していることを公表して欲しくないのだろうか?
そして、1,700ヶ所におよぶスタンド1つ1つに経産省は本当に確認をとったのだろうか?
役にも立たない情報を発信していながら「全然ないよりはましだろう」との、いかにも上から目線のお上の態度が透けてみえる。

だから、若者はこんなSNSから情報を得ているんだろうな。

(2)停電情報
停電はいつ復帰するのか? 現在どの範囲が停電しているのか?地震が起きて以来最も知りたかった情報だし、それを入手しようとネット上での情報をいろいろ集めようと試みた。ブラックアウトを起こした北海道電力のホームページからは地震発生後、なぜか全く情報が得られなくなった。



北電のページに行くと、停電情報が閲覧できる。しかし、矢印のバナーをクリックしても、下のような接続エラーが
表示されてしまう。



いかにもこちらのスマホ側の通信速度に問題があるような表示がされるが、ブラウザーソフトを変えて、何回か繰り返していると、HTTP ERROR 504などが表示され、ついには「ただいま、サーバメンテナンスのため情報公開を停止しております」
の表示がされ、北電側が意図的に停電情報の提供を停止していたことは明らかだった。

これは停電情報や今後の復旧対策などの情報発信が北電から官邸の統制下に置かれたことを示していると思われる。

以降、世耕経産大臣の発言を振り返ってみると:
9月6日(全域停電発生) ブラックアウトの原因となった厚真発電所を1週間程度で復旧させる

9月7日 計画停電の準備を表明、平日の日中に限り10%の節電協力を要請

9月8日 夕刻には停電はほぼ解消。しかし、節電協力目標は20%に引き上げ

9月10日 20%節電目標は20%節電要請に引き上げられる

9月11日 厚真火力発電所の全面復旧は11月以降になると表明
    同日、来道して知事と会談、20%節電要請の継続で一致

9月14日 18日からの20%節電要請取りやめを発表。計画停電も当面実施しないと説明

すでに停止していた古い水力や火力発電所を立ち上げ、羊蹄山のそばにある揚水発電所の再稼働などで、
対策の手が刻々と打たれたこともあるが、官邸や大臣の発言がコロコロ変わるのは見苦しいものだった。
11日に北電がやっと公開した厚真火力発電所の被災後の現場写真を見れば、素人でも1週間程度で復旧可能
などとは言えないはずだ。
 
 北電が公表した現場写真

東日本大震災で東京電力の原発が被災し、水素爆発、炉心溶融、放射能飛散に至る過程で、当時の民主党政権の官房、
東京電力経営陣、原発の現場の3者が事故情報の共有と事故対応をめぐり、暗闘を繰り返していた。
「パニックを避ける」「一般には公表出来ない」との大義名分に政治家のパフォーマンスが絡まり合っていたという。
国費100億円をかけて開発した緊急時迅速放射能影響ネットワークシステム(SPEEDI)に関しても、原発事故時のデータは公表されなかったが、事故直後にアメリカには提供されるということが起こった。
このため、放射能汚染を避けて避難した多数の住民が、放射性物質の飛散方向と同じ方向に向かった悲劇も起きた。
今回のブラックアウトに関して、北海道電力と、政府の間に同じようなことが起きていなかったことを祈りたい。

余談だが、当時ネットおたくだった私は、日本のボランティアからデータの提供を受け、ドイツ気象庁がSPEEDIと同じようなシミュレーションを行っていることを知り、公開された動画を毎日のように見ていたことを思い出した。


  ドイツ気象庁によるドイツ版SPEEDI?による東電原発からの放射能拡散状況


(3)テレビ、ラジオからの情報
さすがにこのぐらいの災害になると、公共放送はもちろん地元の民放も「地震一色」の番組になる。
ただし、ネットと違って、自分の欲しい情報だけ流してくれるとは限らない。我が町に関する欲しい情報がいつ放送されるのかは分からない。チャンネルを切り替えているうちに、欲しい情報を得る機会を失うことだってある。
リアルタイムとは少しずれることもある。NHKは情報の確度を上げるためか、民放より情報が少し遅いときがある。
私の家からは、日高自動車道が見える。ラジオやTVで、「地震後の亀裂や陥没のチェックのため現在不通です」と
放送していても、上下線とも車が流れていたりする。

 ラジオで「通行止め」と報道されている日高道を走る車

(4)地元自治体からの情報
これは9月19日300人ものボランティアの仕事の割り振りを終わって、災害対策本部のテントの中でヒマそうにしている
町役場の職員と私が交わした会話の一部を再現したものである。

私 「町民への地震災害の情報の第一報を発信したのは何時か?」
町職員 「はっきりした時間はわからないが、朝一番に緊急行政無線を放送しました」
「緊急行政無線って柱の上にスピーカが乗っかった、昔あった街頭放送みたいなやつだよね、普段は時報をチャイムで流した りしてるやつかな」
「私は街頭放送というのは知りませんが、そうです」

  
   むかわ町の緊急行政無線

「地震があった朝、行政無線が何か放送しているのには気がついて、外に出て耳を澄ましたが聞き取れなかった。
 私の家は豊城で役場から3.5km離れているので、、、」

「町ではお年寄り見回りをやっていますので、係のものがお宅までお伺いしませんでしたか?」
「地震発生後、13時間も経ってから来たよ。避難所は四季の館か、近くなら報徳館へ行ってくれと言われた。
 もっと情報をスピーディーに発信できないものかね」
「、、、、、、、、、、」
「あの日の朝、となりの日高町から緊急エリアメールが携帯に届いて、避難場所、病院の緊急対応、小中学校の臨時休校など 情報が来たんだが、うちの町は災害情報をエリアメールで伝えることはしていないの?」
「スマホを持っているお年寄りが少ないもので、、、」
「ガラケーで受信できるんだよ」
「町のホームページはご覧になりましたか?緊急災害情報を沢山載せておりますが、、、、?」
「見てるよ。いかにも震災直後から情報発信しているようになっているけど、ページを解析するとすぐばれるが、最初の更新 がされたのは9月12日でほぼ1週間も経ってからだよ。多分、職員が自分で更新できないので原稿を渡して業者まかせなんだ ろうけど」
「たしかにHPでは迅速性に問題あるので、SNS(FaceBook)での発信もしておりますが、、、、、」
「あぁ、災害ボランティアセンターね。ボランティアはありがたいけど、これ見ると、レジャー気分で来ている人たちが
 載せている自己満足的なコメントや写真が多く、本当に町民に役立っているのかな〜

  https://www.facebook.com/mukawavc

「まぁ、うるさい爺さんがいろいろ厳しいこと言ったけど、頑張ってください。」
「ところで町内会にはお入りですか?」
「いや、入っていません」
「町内会を通じても、いろいろ情報を流させていただいておりますので、、、、」
「、、、、、、、、、」

家に帰って家内にこの話をする。
「町の職員をいじめたから、一本採られたのね。貴方が現役の時は忙しかったから、私は転勤先も含めていろんな所の
町内会の仕事をしたわ。でもこの辺の土地は、私たち含めて高齢化しているから、いざというときの助け合いなんか不可能で
しょうね。」

行政組織の実際の最小単位といわれる自治会・町内会は都市部では住民の参加率が下がり、すでに崩壊しつつある
ときくが、地方は高齢化で同じ道を歩むのか?
そのことが災害対応力が落ちることになるのか、、、、どうする政治家の皆さん。



                   PC老人の震災日記(5)へ続く